不動産売却虎の巻12 売却の依頼の種類を知っておきましょう
・さて、いざ媒介契約を結ぶとなると、不動産会社選びがかなり重要になってきます。査定を依頼した数社の中から、専任媒介契約(専属専任媒介契約も含む)を結ぶなら、1社、一般媒介契約なら3社〜5社と少し多めに依頼された方が良いでしょう
選ぶときは、「査定時の担当者の印象や対応」「幅広いネットワークを持っているかどうか」「売却計画の内容はどうか」といった点を参考に判断しましょう。不動産会社の担当者は、いってみれば“住まい売却のパートナー”のようなもの。売却に関する知識や経験が豊富であるかどうかだけでなく、担当者との相性も重要なカギを握ります。住まいの販売活動は順風満帆に運ぶとは限りません。売りに出したものの反響が芳しくないときや思わぬトラブルが生じたとき、さらに買い替えの際に生じる売却と購入の資金計画など、ときにはプライベートな面に踏み込んだ相談をすることも考えられます。どのような場合でも、信頼して相談できる相手かどうか見極めることが肝心です。
■販売の依頼先を決めるもう一つのポイント
□ 不動産会社に売却を依頼する際、契約形態のメリット・デメリットを知っていますか?
□ 契約する不動産会社に信頼できる営業担当者はいますか?
「住まいを売り出すには、まず不動産会社と、売却を仲介してもらうための取り決め=契約を行います。これは「媒介契約」と呼ばれます。契約と言っても売却を依頼する契約ですからこの時点で費用がかかることはありません。また、売却活動をやめることもできます。ではなぜ契約を結ぶのかというと、もしあなたの家が勝手に販売活動されたりしたら大変なことです。そういったことを防ぐために媒介契約(売却の依頼)を結ぶことが法律で定められているのです。
そして、不動産の売却依頼は販売の依頼を一社にしか頼めない契約もあります。
■不動産会社との媒介契約は3種類があります。どの契約形態がいいのか考えよう。
・媒介契約は3種類あり、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3つです。
・売主から見た3種類の媒介契約のメリット・デメリット
1、一般媒介契約
依頼者が他の宅建業者に重ねて依頼することができる媒介契約です。同時に何社でも依頼することが出来て、他の媒介契約で求められている義務や制限がないと言うのが、特徴です。レインズ(※)への登録は任意。売主に対し販売状況の報告義務はない。
• 【メリット】
• 複数の不動産会社に依頼できるため、販売活動を広く行うことができる
• 依頼した複数の不動産会社間で競争心理が働くことで販売活動が活性化される
• レインズ登録義務がないため、近所の人に知られることなく(プライバシーを保護した状態で)販売活動を行うことができる
• 成約しても、「いつ、いくらで売れた」という情報を表に出さないようにできるのでプライバシーが守られる
• 自分自身が見つけてきた購入者と売買契約を結ぶことができる
• 【デメリット】
• 不動産会社に販売状況の報告義務がないため、実際の動きが見えず不安がある
• 複数社で販売活動を行うため、不動産会社としては成功報酬を得られる可能性が低くなる。そのため、コストをかけづらく、販売活動が消極的になる会社もある
※レインズとは
real estate information network systemの頭文字をとったもので、国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構」である全国4つの公益法人によって運営されている不動産物件情報交換のためのコンピュータネットワークシステム。売却依頼された不動産は、売却物件情報として登録され、その物件情報は数多くの不動産会社に公開され、取引の拡大を図ることができる。
2. 専任媒介契約
依頼できるのは、不動産会社1社のみ。
売主と契約を結んだ不動産会社は、媒介契約締結後、7日以内にレインズに登録、売主に対し2週間に1回以上の販売状況の報告の義務がある。
依頼者が買主等を自ら見つけて取引をする自己発見取引はできますが、
依頼者が他の宅建業者に重ねて依頼することを禁ずる媒介契約です。
例えば、依頼者Aは、依頼する宅建業者B1社としか媒介契約を結べません。
その不動産会社にしてみれば、他の不動産会社に先を越されて、媒介報酬を持っていかれる心配がないため、ほとんどの業者がこの媒介契約を結ぼうとしています。
• 【メリット】
• 1社だけの依頼のため、販売活動を積極的に行ってもらえる可能性は高い
• 窓口が1社なので情報整理が楽
• 自分自身が見つけてきた購入者と売買契約を結ぶことができる
• 【デメリット】
• 専属専任媒介契約と比べると、状況報告の頻度など義務が緩いため、綿密なフィードバックが得られない可能性がある
• 窓口が1社だけなので、依頼した不動産会社への依存度が高くなってしまう。依頼を受けた会社もライバルがいないので競争心はない。したがって不動産会社選びを慎重に行う必要がある
■依頼者にしてみれば、一社だけで大丈夫だろうか?そんな不安があるのは当然です。だから
宅建業法では、義務や制限を加えているのです。
① 契約の期間は、最長3か月です。これを超えることはできません。
これより長い期間を定めたても、その期間は、3か月となります。
② 契約の更新は依頼者の申出により、更新することができます。
但し、更新の時から3か月を超えることはできません。
依頼者から申出ですから、宅建業者から申出しただけでは、
更新はされないことになります。
また、特約で、自動更新を入れても無効です。
あくまでも、依頼者から申出したときに限られます。
③ 指定流通機構への登録
宅建業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、
媒介契約締結日から7日以内(業者の休日を除く)に、
指定流通機構に登録しなければなりません。
* 媒介契約締結日から7日以内には、業者の休日は含めませんので注意です。
指定流通機構に登録する事項は、以下の通りです。
1.所在、規模、形質
2.売買すべき価額(交換の場合は評価額)
3.都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの
4.専属専任媒介契約である場合は、その旨
登録をした宅建業者は、その証として、登録を証する書面を
遅滞なく依頼者に渡さないといけません。
なお、登録した物件の契約が成立した場合は、成立金額、成立年月日などを
遅滞なく、指定流通機構へ通知しなければなりません。
* 契約が成立した時点に通知です。物件の引渡し時点ではありません。
④ 業務処理報告
宅建業者は、依頼者に対し、業務の処理状況を2週間に1回以上の頻度で
報告しなければいけません。
報告の仕方ですが、特に規定されていませんので、口頭やメール
でも構いません。
3. 専属専任媒介契約
依頼できるのは、不動産会社1社のみ。売主と契約を結んだ不動産会社は、媒介契約締結後、5日以内にレインズ(※)に登録、売主に対し1週間に1回以上の販売状況の報告の義務がある。
依頼者の自己発見取引も禁止、依頼者が他の宅建業者に重ねて依頼することも禁止する媒介契約です。
依頼者に対して制約が一番厳しい媒介契約ですから、宅建業者に対しての義務や制限も専任媒介契約より厳しくなります。専任媒介契約と違う点は、以下の2点です。
他は同じです。
① 指定流通機構への登録が、媒介契約締結日から5日以内(業者の休日は除く)
② 業務の処理状況の頻度が、1週間に1回以上です
【メリット】
• 契約を結んだ1社だけしか販売活動を行えない、つまり依頼を受けた会社はほぼ確実に成功報酬を得られることから広告費などコストをかけた積極的な販売活動を行ってもらえる傾向が高い
• 窓口が1社なので情報整理が楽
• 【デメリット】
• 契約した不動産会社しか販売活動を行えないため、仮に自分自身が購入者を見つけたとしても売買契約を結ぶことができない
• 窓口が1社だけなので、依頼した不動産会社への依存度が高くなってしまう。依頼をうけた会社はライバルがいないので競争心はない。したがって不動産会社選びを慎重に行う必要がある
上記の専属専任媒介と専任媒介は1社に絞って契約するもので、一般媒介は複数の会社に売却を任せる契約です。
一概に、どの契約がよいということはいえませんが、どの媒介契約を選択するべきか判断するには、それぞれのメリットとデメリットを理解しておく必要があります。たとえば、専属専任媒介と専任媒介は1社だけに依頼するため、依頼された不動産会社の売却活動にもおのずと力が入りやすい傾向にあります。一方、一般媒介は数社が競い合って販売活動をするため、販売活動が活発になることが期待できる半面、売る側にとって対応が煩雑になるなどデメリットもあります。
各媒介契約の説明とメリット・デメリットを表にまとめましたので参考にしてください。